第10話 TVでやってるけど私でもアパート経営ってできるの?

(写真=chombosan/shutterstock)

巨額の負債を抱える日本について調べ、興味をもって再び投資について勉強を始める。

前回:「日本の借金」について学んだことで、またひとつ経済のことが理解できた。
投資はじめました第9話はこちら

家に帰り、晩飯を食べながらなんとなくTVを見ていると「誰でもはじめられるアパート経営」のCMが流れていた。

アパート経営か…オーナーになれば毎月賃料収入が入ってくるのかな?

本当にアパート経営は誰でもできるのか?

出社して日課になった日経新聞にひととおり目を通す。そこに、総務のマイコ先輩が郵便を配りにやってきた。

「やっぱりこれからはアパート経営の時代か」

「なんやなんや? 今度はアパート経営者目指しとんのか?w」
狙い通りニシカワ先輩が食いついた。こういうときノリのいい関西人は助かる。

「ええ、投資のことを勉強にするには不動産投資のことも知っておかないと思いまして」

本当は昨晩CMを見て興味を持っただけだが、できる限りのキメ顔で精一杯格好をつけてみる。

「アパート経営も投資の一種だから、興味を持つのはいいことだ。ただし、先日もいったようにきちんと自分で調べること。これが大事だ」とオオタ部長。

「はい。興味があるのでこれから勉強します」

「なんや、これから勉強するんかいなw」

そんなやりとりを横目に部長に郵便物を届けたマイコ先輩。
「オオタ部長のところは、いつも賑やかでいいですね~」と言い残して去っていった。

ちぇっ、また話しかけてもらえなかったか……。
仕方がない。気を取り直して、アパート経営の勉強だ。

「ん? 待てよ……」ここで我に返る。
アパート経営は一棟所有して部屋を貸すのが基本とのこと。そもそも貯金がちょっとしかない自分がアパート一棟まるまる買うなんてできるわけない……。

アパート経営は自己資金が少額でも始められる!?

(写真= yoshi0511/shutterstock)

「あのー、ニシカワ先輩。アパート経営をはじめるのに資金はどれくらい必要なんでしょうか? CMでは自己資金が少額でも大丈夫といっていたんですが……」

「アパート経営の資金か…。一応オレも20代なのでアパートは流石にもってないし、ようわからへんねん。詳しい人を呼ぶわ」

ハイ?誰ですか?

しばらくすると、そこにマイコ先輩が戻って来た。

「ま、マイコ先輩!!!!!ま、まさか!!!」

「まさかってw 私、アパート経営してないわよw
でも、前職で営業してたの。
で、セミナーで案内していた時に、ニシカワさんが来ていて、転職したらばったり会ったの」
そうなんだ。うらやましい・・・。
しかし、ニシカワ先輩、20代だから持ってないって、買う間際じゃないすかw

「アパート経営の資金ね。
土地を買って新築のアパートを建てるのか、中古アパートを買うのか、地価がどれくらいかで変わるけど、手数料なんかで最初に自己資金は必要になるわ。自己資金がほとんどなしで始められるところと謳う会社なんかもあるけど、それは投資リスクとの兼ね合いで考えた方がいいわ」

す、素敵だ・・・。
おっとこんな場合じゃなかった。ここがマイコ先輩に認めてもらうチャンス。
(何のチャンス?)

銀行の貸出金利が安い今は銀行ローンを借りるチャンスという記事を思い出したこと、アパート経営のことを解説しているサイトで得た知識で質問をしてみる。

「要するに土地と建物の購入費用の多くを銀行からのローンにするってことですよね? 今は銀行の貸出金利が安いので、借りて運用する方が得という考えにはなりませんか? 入居者の賃料で銀行ローンは返済できるので、最終的に土地とアパートが一棟まるまる自分の資産になりますし」

「そうなんだけど、自己資金ゼロで始めて、思うように入居者が決まらず賃料収入がなかったら、銀行からのローン返せないわよ。 設備に不具合が起きたり、建物が壊れたりといった突発的な事態が起きたときや入居者が退去したら原状回復費用や修理代も必要よ」

「自己資金もないのに莫大な負債を抱えて不動産に投資するのは、投資ではなく投機(ギャンブル)になってしまう可能性もある。
リスクを洗い出して成功確率を高くして取り組んでも損はするものだ。
損をしたら生きていけない状況など作ってはまずいぞ」
と、いつになく強い調子でオオタ部長にもたしなめられた。

たしかにそのとおりだ。銀行のローンを返せなくなって自己資金が尽きたら……。
自分の甘い考えが恥ずかしい。

「そうなの。アパート経営は、考えることが多くて、資金の調達方法(銀行の貸出金利)もあるし、成功させるには、人気エリアや駅に近い利便性のいい場所といった、空室になりにくい立地とか条件も大切なの。あと、もちろん物件の構造とか、物件管理状態とかもあるわ」

「そうやねん。アパート経営できたらと思って、サクッとセミナー行ってみたら、マイコ先輩に真面目に考えなさいと言われたワケ。
ところで……このさくら餅うまいで、食うか?」

「い、いえ、けっこうです……」
朝からさくら粉餅ですか。

「そのとおりだ。アパート経営一つとっても気をつけないといけないことは山の様にある。」と部長。

「投資の知識が不足していると、メリットやリターンばかり見てしまいがちだ。
そうすると、ハイリスクの投資先に手を出して失敗してしまうこともありがちだ。
そうならないように、きちんと情報を仕入れてデメリットやリスクについても学ぶことが大切だぞ。
今回の話でもアパート経営のリスクを考えておけば、自己資金ほとんどゼロではじめるといった考えにはならなかったはずだ」
なるほど、さすがオオタ部長は説得力がある。肝に銘じておきます。

今度はアパート経営で想定されるリスクについて考えてみる。
「リスクとして考えられるのは、空室で賃料が入らない(空室リスク)、アパートの補修費用・建物の老朽化(大規模修繕)、自然災害や火災などで建物が壊れる可能性(建物毀損リスク)、土地価格の下落(価格低下リスク)やローン金利の上昇(金利上昇リスク)などでしょうか?」ちょっと考えただけで、自分でも驚くほどたくさんのリスクが思い浮かぶ。

「それ以外にもたくさんあるけど、そのなかでも想像しやすいのが、やっぱり空室が増えて思うように賃料が入らないこと。赤字経営じゃ意味がないし。
なのでアパート経営を代行する管理会社には、賃料保証(サブリース)をしてくれるところも結構あるわ。賃料固定型のサブリースと、賃料の実績に応じて変動するサブリースの2種類ね」。
マイコ先輩、完全にセミナーのノリですね。

「サブリースは常に一定の収入が得られる反面、契約内容によっては礼金や更新料は管理会社の収入になってしまうケースもある。賃料固定型のサブリースと、賃料変動型のサブリースは、両方メリット・デメリットがある。もし本気でアパート経営を考えているなら、そもそもサブリースを選択するのか、もし仮にサブリースを選択するとしたらどちらの方法を選ぶかはよく考えないとダメだ」
と、オオタ部長。
仰るとおりだと思いますmm

都心のマンションの方が魅力的?

(写真=Imagepocket/shutterstock)

ここまで話をしてきて、立地がポイントでできるだけ空室を出さないということであれば、郊外や地方でのアパート経営よりも、人気のある都心の分譲マンションの方が投資先として魅力に思えてきた。

「マイコ先輩。ちょっと気になったことがあったので、ひとついいですか? 
立地のよさがポイントなら地方のアパートではなく、人気のある都心の分譲マンションを一部屋買って賃貸に出したらいいのではないでしょうか? 
購入金額もさほど変わりませんよね?」

「そうねえ。よくセミナーで聞かれたわ。
でも分譲マンション一部屋の場合、空室か満室のどっちでしょ? そうなると収入が0か100になっちゃう。しかも分譲マンションは、管理組合に支払う管理費や修繕積立金もあるし、また土地の持分も少ないから建物の価値が下がると資産価値も下がってしまうのよ」

「その代わり分譲マンションの多くは鉄筋コンクリート造で耐用年数も長いっていうメリットがある」
オオタ部長、さてはマンションをサブリースで貸してますねフフ(フフって)

「なるほど、アパート経営もマンション経営も一長一短があるってことですね」

「そうだ。将来自分が住むつもりで都心の分譲マンションを買っておくってのもありだ」

なるほど、将来自分で住むことを想定して購入し、状況によっては賃貸するというやり方もあるのか。
とはいえ、今の自分の資金ではアパートやマンションへの投資は厳しそうだ……。

あ、いつの間にかマイコ先輩の姿もない・・・。

「う~ん、難易度高いっす。
何か、私みたいな若手で投資できるものないっすかね~」

なにっ!
「ハヨ調べんかい!」ニシカワ先輩(怒)
「オイ調べたまえ!」オオタ部長(怒)
「ハイかしこまりました!!」(涙)

 

次回へ続く。

 

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
 実在の取材などでご協力いただいた皆様については、許諾いただいた場合に限り、実名でご登場いただきます。
 フィクションとしてお楽しみいただきつつ、皆様の資産形成にお役立てください。