税制改正で何が変わった?~小規模宅地等の特例・家なき子特例~

(写真=nednapa/Shutterstock.com)

 平成30年度税制改正大綱が公表され、相続税における小規模宅地等の特例について要件が見直されることとなりました。この特例はこれまで本来の趣旨とは異なった方法で活用されることが多かったため、今回の改正に至りました。難解な点が多い特例ですので、そもそも小規模宅地等の特例とは何かという基礎から説明し、改正によって何ができなくなったのかじっくりと解説します。

小規模宅地等の特例とは

 この特例は、亡くなった方の自宅の敷地や事業用の敷地を相続するときに、相続人が居住または事業を継続することができるよう、相続税の計算上で一定の配慮をするという政策目的で設けられたものです。特例に該当すると土地の評価額が一定の面積の範囲内で50%~80%減額され、納税負担が軽減されます。
 
 例えば1億円の土地が50%減額だと5,000万円、80%減額に該当すれば2,000万円の評価額となるので、特例の要件に該当するかどうかは、大きなポイントです。
 
 今回は下記の表の小規模宅地等の特例全体のうち、居住用④3年内持ち家なし別居親族と事業用③貸付事業用の要件の改正が行われました。

 【表:小規模宅地等の特例の全体像】

居住用の土地についての要件改正(表における居住用④の事例)

亡くなった方の自宅の敷地を持ち家のない子供などが相続した場合に80%減額できた要件が厳しくなる

特例の内容
 
 特例を適用することにより、一定の要件を満たす被相続人等が居住していた家屋の敷地を、相続開始前3年間、持ち家ではなく賃貸物件などに居住している別居の子供などが相続する場合、その宅地を他へ売却せずに相続税の申告期限(10か月後)まで所有することを条件として、土地全体の評価額から330㎡までの面積について評価額が80%減額され納税負担が軽減されます。これがいわゆる家なき子特例です。※ただし被相続人に配偶者・同居していた法定相続人がいない場合に限る。

 例えば、自宅の敷地が路線価評価で8,000万円、330㎡の面積だった場合。

 8,000万円の80%減額で1,600万円の評価額となり、結果、6,400万円の評価の減額です。

制度趣旨とは異なる活用方法
 
 この特例、すなわち相続開始前3年間持ち家のない状況を意図的に作り出し、税負担の軽減を受けようとして、相続人が実際は自分の家に居住しているにもかかわらず、その持ち家の名義を形式的に孫や関係会社など移し変えて名義を変更した後、その孫などから「借りた」形にして、持ち家だったところにそのまま住み続け、相続税申告後にその孫などから持ち家を買い戻す、等の節税テクニックがインターネットなどで流布されました。
 
 上記のケースで言えば、相続開始の3年より前に自宅の名義を孫などに変えておくことで6,400万円の相続財産の圧縮が可能というわけです。
 
 しかしこの特例は、本当に持ち家がない相続人が被相続人の居住用宅地を相続することにより将来的にそこに引っ越してその宅地を守っていくことを本来の趣旨としています。形式面だけ持ち家がない相続人になるのは本来の趣旨を考えると本末転倒です。

特例適用要件が厳しくなる
 
 今回の改正で以下の2つが要件に追加され、特例の適用が厳しくなりました。
 
 1つは、「相続開始前3年以内の所有家屋」の判定。
 
 相続開始前3年以内に「相続人とその配偶者の所有する家屋」に加えて「3親等以内の親族、またはその者と特別な関係のある会社が所有する家屋」が追加され、孫や被相続人、関係会社などの持ち家に住んでいる者も特例の適用除外となりました。
 
 もう1つは相続開始時点で相続人が住んでいる家の過去の所有状況。
 
 相続開始時点で相続人が住んでいる家を、過去に相続人自身が所有していたことがある場合、特例が受けられなくなりました。

 この改正により、次のようなケースは特例が受けられなくなります。

• 持っている家を、形式的に孫や関係会社などに売却または贈与し、そのままその家に住み続ける。

• 被相続人(親)が亡くなる前に自分の相続人(子)の家を取得し、そこにそのまま相続人(子)を住まわせる。

• 遺言により、家を持っている子供の相続ではなく、まだ家を持っていない孫に遺贈する。

 【図解:80%減額できなくなったケース】

貸付事業用の土地についての要件改正(表における事業用③の事例)

 相続した土地が「貸付事業用宅地等」という被相続人等が貸付事業をしていた土地に該当した場合、土地全体の評価額から200㎡までの面積について50%評価額が減額され、納税負担が軽減されます。
 
 例えば、被相続人が生前、1億円の現金で、時価1億円、土地面積200㎡の駐車場を購入して駐車場事業を行い、その土地が貸付事業用宅地等に該当した場合。

 まず土地の評価(路線価評価)でおよそ時価の8割の8,000万円の評価額に。
 
 次に小規模宅地の特例(貸付事業用)の適用で50%減額、4,000万円の評価額に。
 
 結果、1億円の現金が評価額4,000万円の土地となって、6,000万円もの減額になります。
 
 つまり、相続開始直前に1億円の現金を駐車場に換えることで6,000万円の相続財産が圧縮されることになります。

相続開始前3年以内に貸付けを開始した不動産は50%減額の除外に

制度趣旨とは異なる活用方法

 
 この特例を受けるために、もともと賃貸事業をしていなかったにもかかわらず、相続開始の直前に都内のタワーマンションや駐車場などの不動産を購入し、相続税負担を軽減するケースが問題となりました。
 
 今回の改正では相続開始前3年以内に貸し付けを開始した不動産については、特例の対象から除外され、特例適用できないこととなったのです。
 
 ただし、もともと3年を超えて事業的規模で貸付けを行っている場合は、本来の事業継続がなされているので特例適用されます。
 
 【図解:問題となったケース】


なお本改正は、平成30年4月1日以後開始する相続より適用となります。

小規模宅地等の特例に限らず、他の制度でも税制改正によって大幅な変更があったために今までできたことができなくなっている場合があります。そのため、今後も税制改正と本来の目的にそぐわない活用方法がある制度について、注視する必要がありそうです。

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