
第104話 不動産小口化商品はどうやって選べばいいの?③
(写真= Shaynepplstockphoto/Shutterstock.com)
前回:不動産小口化商品を選ぶポイントについて自分なりに考えてみた結果、ある程度の選択の基準が見えてきた。
■小口化商品で不動産を見る目を養う!
不動産小口化商品のメリットは、本来なら多額の資金が必要な好立地の優良不動産に、少額で投資ができることだと思っている。好立地の優良不動産と聞いて大部分の人が思い浮かべるのは、おそらく都心の一等地の居住用マンションや商業ビルだろう。
自分もそう思っていたし、実際のところ不動産小口化商品が扱う不動産も都心の人気ブランドエリアであることが多い。単純な話、人気のあるエリアや発展が予想されるエリアというのは、資産価値が下落しにくく空室リスクも低いので、失敗しにくい場所ということだ。
ただし、都心以外でも資産価値が下落しにくいエリアというのはあって、たとえば政令指定都市の中心地の物件を扱う不動産小口化商品も出ている。想定利回りは都心の物件とあまり変わらないが、どこか将来性を感じてしまう。
このままだと決められないので、思い切ってニシカワ先輩に電話して聞いてみることに。口は悪いけど核心をついてくるので、きっと決断の材料になるはずだ。
「ニシカワ先輩。ご無沙汰してます」
「なんや。今日は何の用や?」
「じつは不動産小口化商品への投資を考えているんですけど、都心の物件と地方の物件とどっちがいいのか教えてもらおうと思いまして」
「初心者にチャレンジはいらんやろ。まずは手堅いところでいっとけや」
「そうなんですけど、東京都心の物件ってありきたりで……」
「アホ、投資は平凡でええんや。それにな、最初は立地が具体的にイメージできるか、現地をすぐに確認できる物件のほうがいいんとちゃうか?」
「確かに東京都心以外の物件だとどんな場所か具体的にイメージできませんね……」
「そやろ? 小口化商品ゆーても本質は不動産投資なんや。土地勘もない、イメージもできない不動産にポンと金出すのは初心者がやることちゃうやろ? 自分の目で見て判断して物件を選ぶ、それを繰り返して不動産を見る目を養っていくんや。ワイはそう思うで」
「そうですね! よしっ、踏ん切りがつきました!! やっぱり先輩に相談して良かったなぁ」
「そやろ? とはゆーてもやな、信頼できる会社の商品なら、どのエリアの物件でもたいした違いはないやろ。なにしろ不動産のプロが厳選しとるんやからな。ほな、仕事せなあかんから切るで~」
「あ、まだ聞きたいことが……(ツーツーツー)」
居住系がいいのか商業系がいいのかも教えてほしかったのに……。
■安定か? 利回りか?
(写真= Elnur/Shutterstock.com)
ニシカワ先輩との電話を聞いていたらしいフクダ課長が話しかけてきた。
「不動産小口化商品のことかい?」
「はい、そうです。居住用がいいのか商業用がいいのかを教えてほしかったんですが……」
「なるほどねぇ。あくまでも一般論だけど、居住用物件は景気の影響を受けにくく、商業物件は景気の影響を受けやすいといわれているよ」
「ということは、安定性を求めるなら居住用ってことですね」
「そういうことになるね。とくに商業用物件は景気が悪いときに空室になると、なかなか次の借り主が決まらないこともある。それで賃料を下げれば、今度は想定利回りを下回ってしまう可能性だってあるんだ。逆に景気が良いときなら、想定利回りを上回ることもあるんだけどね」
「でも人気エリアならそういう影響は受けにくいのではないでしょうか?」
「そうだね。だから小口化商品の事業者も、安定した収益が見込める好立地の優良不動産をピックアップしてるんだ。結局のところ、不動産の良し悪しは立地がほとんどを決めるといってもいいほどだからね」
「ということは、やっぱり事業者の選定が一番大事なんですかね?」
「不動産小口化商品を販売するには財務や資金管理方法などに基準があって、国土交通大臣や都道府県知事の許可が必要だから、いきなり倒産するようなことは少ないと思うよ。だけど、不動産事業の経験がどれくらいあるかがボクはポイントだと思うんだ。やっぱり不動産経営は物件の維持管理とか入居者募集とかのノウハウが重要だからねぇ」
「これまでの不動産事業の経験が大事ということですね」
「そう。もちろん新興の会社だから信用できないということではないけどね。あとは、自分が安定性と利回りのどっちを重視するかで選べばいいんじゃないかな? たとえば賃料保証のサブリース方式の商品だと安定性は高いけど、利回りは低くなる。その安定性を魅力に感じるか、低い利回りを不満に思うかは人それぞれだからね。そこはやっぱり自分の判断だよ」
「とても参考になります。ありがとうございました」
ニシカワ先輩とフクダ課長の話を聞いて、不動産事業の経験がある会社の商品から、都心の居住用物件を選ぶことに決めた。極めてオーソドックスな選択だが、物件を絞り込んだら、可能な限りセミナーや現地説明会などに参加するつもりだ。不動産を見る目を養って、将来的にはビルのオーナーを目指すぞ!!(短絡的かつ話が飛躍し過ぎです)