
第69話 急速に市場が拡大している貸し会議室ビジネスとは?
前回:空き家の増加が社会問題になりつつあることを知り、対策がはじまっていると同時にビジネスチャンスが生まれていることを知った。
第68話はこちら→
(写真=Mopic/Shutterstock.com)
オフィスの会議室もシェアリングの時代に
今日はオオタ部長、タカヤマさんと一緒に、急速に需要が伸びている貸し会議室についての話を聞くため、貸し会議室の予約サイトを運営する会社に往訪することになっている。タカヤマさんと一緒なのは嬉しい反面、なんだか微妙に避けられている気がするので複雑な心境だ……。
ニシカワ先輩は相変わらず忙しそうで、今日は事務作業があるため一緒に来られないとのこと。ここはいいところを見せてポイントを稼ぎたいところだ。
ということで、3人で貸し会議室を運営する会社へと向かう。受付を済ませると、ほどなく自分より少し年上に見えるスーツ姿の男性が現れた。
「サイトウ社長、お忙しいところすみません。本日はお世話になります」
えっ! 社長? 自分と大して年齢も変わらなそうなのに社長なんだ……と軽くショックを受ける。
アイスブレークの会話が繰り広げられていたのが耳に入ってこなかった。。
「それで、なぜ貸し会議室の需要が伸びているのか教えてください」
オオタ部長が話を切り出す。
「はい。まずひとつは経費削減が考えられます。賃料の高いオフィスビルへの入居を避ける企業が増えていて、会議室のスペースが確保できないとか、意図的に会議室を設けない会社もあるようです」
「なるほど、シェアリングエコノミーの考え方で、会議室は必要なときに借りるという企業が増えているということですね?」
じつは貸し会議室の会社に行くと聞いていたので、タカヤマさんにいいところを見せられるようしっかり予習してきたのだ。
「そうですね。貸し会議室なら目的や集まる人数によって場所、大きさ、設備を自由に選べるので、使い勝手がいいんです。ですから、打ち合わせや会議、商談だけでなく、会社説明会やセミナー、講演会、新年会、忘年会など、いろいろな目的で使われるようになっています」
「確かに便利そうですね! 企業じゃなくても借りることができるんでしょうか?」
いつものことながら、タカヤマさんはいい質問をするので感心する。
「もちろんです。出先で仕事をしたいサラリーマンやフリーランスの方、大学のゼミやサークルの集まり、個人の方が開く教室やワークショップなどでもご利用いただいています。当社はそうした方々の需要に応えられるよう、首都圏を中心に貸し会議室を運営しています」
シェアリングエコノミーが徐々に広まっているのは実感としてあったが、貸し会議室の需要がそこまで大きくなっているとは意外だった。そして、そこに目をつけてすでにビジネスとして成功させているサイトウ社長の先見の明にも驚くばかりだ。
賃貸物件での運営も可能!
(写真=KPG_Payless/Shutterstock.com)
「貸し会議室はどうやって確保しているんですか?」
需要についてはわかったので、このビジネスのポイントについて質問する。
「当社の場合、遊休スペースを活用したい方と投資家の方の物件を集めて掲載しています。遊休スペースというのは、企業の会議室、英会話スクールなどの教室の使われていない時間帯、開店前の飲食店の個室といったものです。こうした遊休スペースを貸し会議室として貸すことで、所有者には使用料が入り、使いたい側は安くスペースを借りられ、ウィンウィンとなるわけです。つまり、スペースのシェアリングですね」
「なるほど、それでは投資家というのはどういう方たちなんでしょう? 自己所有物件を貸すのでしょうか?」
正直こっちが本命の質問だ。どんな人たちがやっているか興味がある。
「マンションのオーナーやワンルームのオーナーなど自己所有物件で運営される方もいますが、オフィス街近くのワンルームマンションや雑居ビルの一室を借りて運営するケースも少なくありません。賃料を払って机や椅子、ホワイトボードなどの設備投資をしても、都心の駅近であれば十分な収益があります。もちろん、不特定多数の人が出入りすることになるので、大家さんの承認は必要ですが」
「賃貸物件で家賃を払っても収益が上がるんですか?」
自分が聞きたかったことをタカヤマさんに聞かれてしまった。
「はい。しかも、賃貸なので初期費用は敷金、礼金、仲介手数料とそれほどかかりませんから、回収も早いんです。うまくいかなければすぐにやめることができることもあって、資金力の乏しい若い方が資産運用のために運営しているケースも多いんですよ。こういう時代ですから、年齢に関係なく資産運用についてしっかり考えている方が増えているということなんでしょう」
「やっぱり若くても資産運用は必要ですよね! しっかり将来のことを考えていれば、そういう選択になると思いますし、時間は有効につかわないとダメですね!!」
タカヤマさんは感心しきりだ。
会社への帰路。タカヤマさんは部長にサイトウ社長のこと、賃貸物件での貸し会議室投資のことを熱心に話していた。
どうやったら自分もサイトウ社長のようになれるんだろうか。。
次回へ続く。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
実在の取材などでご協力いただいた皆様については、
フィクションとしてお楽しみいただきつつ、