
第52話 新人研修シリーズ(2) 新人に積み立てのイロハを教える!
(写真=Atstock Productions/Shutterstock.com)
前回:いきなり新人教育を任され、焦りながらも投資の基本的知識となる株や投資信託の説明をした。
投資はじめました第51話はこちら→
資産形成の味方"財形貯蓄"
オオタ部長とニシカワ先輩、そして自分の3人でやってきた企画制作部(通称クリエイティ部)に、新人のタカヤマさんが仮配属された。ニシカワ先輩に任されて自分がタカヤマさんに投資について教えることになった。今日は投資研修2回目。新社会人の資産形成について教えるつもりだ。
「おはようございます。よろしくお願いします」と今日も真面目なタカヤマさん。こちらまで緊張してしまう。
「おはよう。今日は新社会人が資産を形成するための第一歩として、小口でもできる"積立"について説明するよ。収入がまだまだ少ない新社会人が資産形成をするには、これが有効なんだ」
「積立ですか? 具体的にはどのようなものがあるのでしょうか?」
「まずは『財形貯蓄』だね。入社時に説明があったと思うけど」
そういえば、1年前に自分も同じようなこと言われたなぁ……。
「はい、それなら入社時に説明を受けました。メモを取ってあるので確認させてください……みつかりました。財形貯蓄には【一般財形貯蓄】【財形年金貯蓄】【財形住宅貯蓄】の3種類がありますね。それぞれの特徴を経理の方から教えていただきました。資料も保管してあります」
「自分、すでに負けてるんとちゃうの?笑」
「うわっ、ニシカワ先輩!?そ、そんなことありませんよ! 制度は理解しているみたいだから、メリットについて2つ説明するね。1つは"毎月自動的に給与から天引きされる"こと。自分でやらなくても、半自動で貯金できるってわけ。もう1つは、"引き出す手続きに時間がかかる"こと。気軽に引き出せないから、取り崩しにくいんだ」
「なるほど。給与から貯金するお金を差し引いた分で生活費をやりくりすることになるので、確実に貯金できますね。小額ですがさっそく始めることにしました。【財形給付金制度】もあるので、しっかり貯めていこうと考えています」
「……そうだね、その制度はおトクだからね……」
財形給付金制度ってなんだっけ……???
「自分、わからんのやろ笑 これ読んで思い出せ」
若いうちから年金対策が必要な時代
(写真=akiyoko/Shutterstock.com)
「まだ実感がないと思うけど、公的年金だけでは老後の暮らしは厳しいといわれているから、財形年金貯蓄も考えてみるといい」なんとか、話題を切り替える。
「そうですね。今後の課題として考えてみたいと思います」
「今は、財形年金貯蓄以外にiDeCoも使えるから、しっかり調べるのが大事だ」
「イデコ…ですか?」
「そう、【個人型確定拠出年金】の略称で、ローマ字で"iDeCo"と書くんだ。預金、保険、投資信託から運用する商品を選んで、毎月自分で決めた掛け金を積み立てていくことができる。しかも、所得税・住民税・運用課税などに税制優遇があるんだ」
「そうなんですね! 勉強になります」
「この制度は"年金だけでは老後の暮らしは難しいから自分で対策をしてください"と国がさじを投げたという意見もある。確かにそういった側面もあるだろうが、自分の意思で資産を運用する機会ができたと考えるべきだ。税制優遇措置を活用しないのはもったいない話だろう」と部長の天の声が。姿が見えないけど、いったいどこから話しているんだろうか?
タカヤマさんも動揺を隠せず、「あ、ありがとうございます」というのが精一杯だった。
「年金やiDeCoの話はここで勉強できるで~」
おトクで身近な百貨店の積立制度
「ちなみに積立には"百貨店"や"旅行"といった変わり種もあるよ。たとえば、百貨店の積立は【友の会】に加入して毎月決まった金額を積み立てると、半年後、1年後に積立金額に上乗せされて商品券などで戻ってくるんだ。1カ月1万円を1年間積み立てると、1万円上乗せされた13万円になるから、利回りが約15.3%になるんだ」と、マイコ先輩に教えてもらったことを話す。
「それは魅力的な利回りですね! ……あれ?でも、1年で12万円が13万円になるなら、利回りは8%ちょっとじゃないですか?」
「それはね……」と、いいかけたところにニシカワ先輩が乱入してくる。
「それはやな"IRR(内部収益率)"という方法で計算せなアカンのや。詳しくはここ読んでや~」
それ、自分が説明したかったのに…。
「百貨店によって積立の金額や期間は変わってくるから、百貨店で買い物する予定があるなら調べてみるといいよ。旅行代理店なんかも似たような積立制度があるからね」
「あとは倒産リスクとかもあるんやで。投資には必ずリスクがある、これだけは絶対忘れたらあかんのや。よう覚えとき」
「はい! ニシカワ先輩、アドバイスありがとうございます!」
なんだか美味しいところを全部もってかれた気が……。
ニシカワ先輩にはやられっぱなしだな。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
実在の取材などでご協力いただいた皆様については、
フィクションとしてお楽しみいただきつつ、