
第29話“イデコ”で老後資金のことを考える
(写真=kenary820/Shutterstock)
前回:積立投資と預金の金額を増やすために家計の節約を決意し、家計簿アプリで収支管理をはじめた。投資はじめました第28話はこちら
目的によって変わる投資期間
金利が比較的高い反面、リスクもある“積立投資”と、金利は低いがリスクが低い“預金”の2本立てでお金を貯めることを決めた。家計の収支管理もはじめたし、そろそろ積み立てる投資先を決めたいところだ。
最近勉強したのは“純金積立”だが、調べてみると積立投資の主流には投資信託もあるようだ。また、お釣りで投資するものも、『金額を決めないで行う積立投資』ともいえる。自分にはいったいどんな積み立てがいいのだろう?
ここは素直に知識が豊富なオオタ部長にアドバイスを求めることにしよう。
「部長、積立投資と預金を並行してお金を貯めようと思うんですが、どんな積立投資が自分に向いているのかがわからないのです」と正直に話す。
「なるほど……。キミが、投資の元手となる資金を貯めたいのか、結婚資金を貯めたいのか、老後資金を貯めたいのか等で選択肢は変わってくるぞ。そこが決まってないから、投資先を絞りこむことができないんじゃないか?」と、やや厳しい口調のオオタ部長。
「なんのためのお金か、ですか……?」
「単純にいえば“期間”の問題やな。例えば、仮に今30歳とするやんか。結婚を40歳までにしたいと考えていたら、結婚資金は5年から10年の積み立てやろ? でも、それが老後資金となれば30年から40年とかそういう話になるやろ?」とニシカワ先輩が珍しく真面目な顔で話に入ってきた。
「いい機会だから、老後資金のことについて考えてみなさい。そうだな、今年の1月からイデコの制度が変わったから調べてみるといい」とオオタ部長から宿題が。
“イデコ”ってなんだろう? さっそく調べてみよう。
税制上の優遇が大きい“イデコ”
(写真=takkun.Shutterstock)
自席に戻り、いつものように “イデコ”を検索してみる。
イデコは、正式には“個人型確定拠出年金”といい、イデコ(iDeCo)というのは愛称だ。去年までは自営業者や企業年金がない会社員が対象だったが、今年から企業年金制度がある会社員、公務員、専業主婦にも対象が広がり、国民年金加入者はほぼ全員加入できるようになったとのこと。
メリットは“積立金は全額所得控除の対象”“運用益は非課税”“積み立てた資金の受け取るときも一定額まで控除の対象”と、税制上のメリットが大きいことだ。そのため、老後資金に不安がある人たちから、大きな注目を集めているらしい。
積み立てられる金額は毎月5,000円から。職種によって積み立てられる上限金額が異なり、自分のような企業の年金のある会社員は月1万2,000円(※年金の種類によっては2万円)だ。運用は元本が確保される定期預金や保険商品のほか投資信託でも運用できるので、自分で選択できるようになっている。
「どうだ? イデコのことはわかったか?」と、頃合いを見たオオタ部長が話しかけてきた。
「はい。だいたいのことはわかりました。でも、どうして国はこんなに税を優遇してくれるんでしょうか?」
「“資産形成を自分自身で行ってほしい”という国からのサインかもしれないな。今の日本は少子高齢化が進んでいるし、現在の年金制度では、今後十分に暮らせるだけの年金を貰える可能性が低くなるだろうし」と渋い顔のオオタ部長。
「年金が天引きされてるのに、ほかに自分でも積み立てておけっちゅーのはキッツイ話やで、ホンマ」とこちらも眉間にシワが寄るほど渋い顔のニシカワ先輩。
と思ったら、酸っぱいお菓子を食べていただけだった……。
「これだけ優遇されるならイデコで積み立てて、必要になったら解約すればいろいろお得ですよね?」我ながら天才的なアイデアだ!
「ホンマにちゃんと調べたんか? それはできん仕組みやで。基本的に60歳になるまでは引き出せんのや。その分優遇されてるっちゅーことやな」
「あー、そうなんですね」やっぱり世の中そんなに甘くなかったか……。
あまりに先の話なので老後資金のことなんて真剣に考えたことも少なかったが、もっとよく考えておいた方がよさそうだ。また、漠然と「投資でお金を増やして余裕のある生活をしたい!」と考えていたが、お金を増やすことを目的にするのではなく、結婚や老後などの明確な目標を決めないとダメだということもわかった。もっともっと人生のことを真剣に考えなきゃ!(いつになく真面目)
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
実在の取材などでご協力いただいた皆様については、
フィクションとしてお楽しみいただきつつ、