
意外と知らない住民税。計算方法や仕組み、所得税との違いなどを解説 【税理士 宮路幸人】
(写真=IhorL/Shutterstock.com)
住民税はもっとも身近な税金ではあるものの、申告納税制度の所得税と違い住民税は賦課課税制度であるため意外とわかりづらいという人も多いのではなかろうか。給与から住民税が天引きされるサラリ-マンなどは特に理解しづらいと思われる。
そもそも住民税とは?
住民税とはその名のとおり、住んでいる自治体に納める税金のことを言う。税金には大きく国税と地方税があり、住民税は地方税となる。住民税は地方自治の立場からその地域に係る費用については、そこに住む住民がその能力に応じて負担するというもので、地域社会を維持するための会費と言われている。自治体の予算は主に税金で賄われており、住民税は税収の中心となる。自治体はその税収をもとに地域住民に対する各種行政サ-ビスを行っているのである。
個人住民税と法人住民税
住民税は、「市区町村民税」と「都道府県民税」の総称であり、住民税は個人住民税と法人住民税に分けられる。ここでは個人住民税について簡単に説明を行いたい。
所得に応じてかけられる所得割と、所得にかかわらず課税される均等割がある。基本的には多くの自治体が標準税率を採用しているが、一部自治体によっては超過課税を採用している所があり、その場合多少高くなっている。
住民税の計算方法及び納付方法
住民税の計算方法はおおむね所得税と同じである。所得区分は所得税と同じ10種類で、収入金額から必要経費(サラリ-マンは給与所得控除)を差し引き、所得を求める。そこからさらに扶養控除等の所得控除を差し引いて課税所得を求め、所得割10%を乗じた所得割と均等割(約5,000円)とをあわせて納付を行うこととなる。また株式譲渡・土地譲渡があった時は分離課税制度により住民税が別途課税されることになる。
住民税の申告方法については、所得税の確定申告をした人は自動的に住民税の申告も行ったことになり、申告する必要はない。またサラリ-マンであれば年末調整で所得税は精算し、住民税は会社が社員の住む自治体に給与支払報告書を提出して住民税の申告は完了となる。納付方法は年1回又は年4回で納める方法を普通徴収、サラリ-マンのように会社の給料から天引きされ毎月の年12回で納める方を特別徴収という。
所得税との違いとしては、所得税はその年の分の所得税を納めるが、住民税は前年の所得に対して課税が行われる。このため、前年に退職した場合や昨年に比べ収入が減っている場合などは納税が困難になる場合があるので注意が必要である。たとえばプロ野球選手の年棒が大きく減額された場合、翌年の住民税は納税するのが大変となる。
所得税は亡くなった場合は亡くなった時点まで所得税が課税されるが、住民税は1月1日に住所がある人が納税義務者となるため、翌年以降(亡くなった年分)は納付する義務がないこととなる。
所得税は所得がなければ納める義務はないが、住民税の場合は原則として所得がなくても均等割額は納めなければならないこととなる。
所得控除額にも違いがあり、たとえば基礎控除は所得税では38万円であるが、住民税は33万円と控除額が少なくなっている。その他の扶養控除等にしても基本的には住民税の方の控除額のほうが少なくなっている。これは所得控除額を所得税と同じくすると、住民税の税収が大きく減少するため所得控除額を少なくしているといわれている。
ふるさと納税と住民税
2008年度よりふるさと納税制度が始まった。その地域の特産品を返礼品とする自治体が現れ、趣向を凝らした豪華な返礼品などもあり、人気を呼んでいる。納税とはいうものの、税制上では寄付金であり、居住する自治体に代えて任意の自治体に寄付する制度となっている。お金の流れを見ると自治体に直接納税したようになるため、ふるさと納税制度と呼ばれている。
税金というと強制的に取られるというイメ-ジをお持ちであろうが、ふるさと納税は全国どこの地域に寄付をしてもよく、様々な返礼品をもらえるという楽しみもある。私もお酒が好きなので、毎年、特産品を比較し寄付をしてその恩恵にあずからせてもらっている。
よく、実質負担額2,000円で、返礼品がもらえるという制度であるといわれているが、その人の所得や家族構成などにもより、年間上限を超えると実質負担額2,000円ではおさまらなくなるので注意が必要となる。
そもそもは、生まれ故郷を離れてもふるさとに貢献できるという趣旨で始まった制度であるが、当初は想定されていなかった寄付額に応じてその地域の特産品を返礼品として送ることをアピールして寄付を募る自治体が増えたことにより、返礼品競争が過熱する事となった。
寄付する側にとっては選択肢が増え大変喜ばしいことではあるが、一方で東京都などの自治体では本来入る筈であった住民税が入らず必要な住民サ-ビスが行われないという事態も生じている。
2017年総務大臣より、返礼割合を3割以内に抑え、地場産品以外を返礼品としないようにと自治体に通知を出した結果、ほとんどの自治体は通知に従ったが、従わない自治体もあり、総務省から「通知に従わない自治体リスト」として12自治体が公表された。今後は指示に従わない自治体は寄付金控除の対象から除外するという改正案もあり今後の動向に注意されたい。
ふるさと納税はいろんな問題点があるとはいえ、寄付する側にとっては、自分で寄付先を選べ、その返礼品をもらえるという利点や制度を通じて日本全国の特産品等を知ることも出来ること、また一部自治体ではふるさと納税のおかげで地場産業や地域に活気がでたというケースもあり、今後改正すべき点はあるがよい面も多い制度であるといえよう。
上場株式の配当にかかる住民税はどうなる?
2017年度改正により上場株式の配当にかかる所得税については所得税と住民税で異なる課税方式を選択することが可能となり、これにより住民税を節税する方法が可能となった。ただし、所得税とは別に住民税を課税通知が来る前に申告する必要があるなど一定の要件があるので該当される方は確認され有利な方法を選択されたい。
以上、簡単ではあるが、住民税についての概要についての説明を述べさせていただいた。
多少なりでも住民税についての理解いただけたら幸いである。
執筆者情報・お問い合わせ先
【執筆者プロフィール】
宮路幸人税理士
税理士・AFP 実務経験が豊富で長年の経験から会計処理・税務処理及び経営に関する相談や税務の相談など様々な問題に対応可能であり、特に不動産、相続を強みとする。宅地建物取引士、マンション管理士等の資格を保有。
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