
所得税とは?基礎控除・給与所得控除? 意外と知らない身近な税について
(写真= kenary820/Shutterstock.com)
所得税は、会社員、個人事業主などの個人がその年の1月1日から12月31日までの一年間に得た所得(=もうけ)に対してかかる税金をいいます。
本稿では、所得税の基本的なしくみと所得税を巡る今後の動向を解説します。
目次[非表示]
- 1.1.所得とは?
- 2.2.所得税の計算のしくみ
- 2.0.1.① 所得金額の計算のしかた
- 2.0.2.②課税所得の計算方法
- 2.0.3.① 基礎控除の見直し
- 2.0.4.② 給与所得控除の見直し
- 2.0.5.③ 給与所得控除と基礎控除をあわせた見直しの影響
1.所得とは?
所得税では、所得の種類を次の10種類に区分しています。所得税を計算する上では所得区分が非常に重要な項目となります。
①利子所得 ②配当所得 ③不動産所得 ④事業所得 ⑤給与所得
⑥退職所得 ⑦山林所得 ⑧譲渡所得 ⑨一時所得 ⑩雑所得
2.所得税の計算のしくみ
所得税の計算のおおまかな流れは以下のとおりとなります。
(ア) 個人が一年間に得た所得を10種類の所得に区分し、それぞれの所得について所得金額を計算します。
(イ) 所得金額から一定の金額を所得控除として差し引いて課税所得を算出します。
(ウ) 課税所得金額に所得税率(5%~45%)をかけて所得税を算出します。
現行の所得税は超過累進税率を採用しているため、課税所得金額が大きくなるにつれて税率も段階的に高くなります。住民税とあわせて最高55%の所得税が課税されます。
出典:国税庁資料一部抜粋・修正
① 所得金額の計算のしかた
所得金額の計算方法は所得の種類によって定められていて、事業所得や不動産所得であれば収入金額から必要経費を差し引いて所得金額を計算します。
なお、給与所得や不動産所得といった複数の所得がある人は、すべての所得金額を合計して所得税を計算しますが、不動産や株式などを売ったときは、他の所得と合計しないで分離して税金を計算することとされています。
所得金額を合計して所得税を計算する方法を総合課税といい、分離して計算する方法を分離課税といいます。
【給与所得の計算のしかた】
会社員が会社からもらう給与所得の金額は以下のとおりとなります。
給与所得金額=収入金額-給与所得控除額
給与所得控除額は、給与所得者の必要経費を概算計算で認めるという性質を有し、給与などの収入金額に応じて求められます。現行の制度では、給与所得控除の額は、年収が1,000万円で頭打ちとなり、上限額も220万円と定められています。
②課税所得の計算方法
所得金額から所得控除額を差し引いた金額が課税所得金額となります。所得控除とは扶養親族がいる、病気などで医療費の負担が重いといった各納税者の個人的事情を加味するために、一定の金額を所得金額から控除できる制度であります。
基礎控除は誰もが一律38万円の控除を受けることのできる制度ですが、このほかにも医療費控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除などの制度があります。
平成32年分以後の所得税から基礎控除と給与所得控除の見直しが行われます。
① 基礎控除の見直し
基礎控除額が現行の38万円から48万円に引き上げられます。一方、合計所得金額※が2,400万円を超える場合から基礎控除額が逓減し、2,500万円を超える場合には基礎控除の適用が受けられなくなります。
※合計所得金額とは、事業所得、不動産所得、給与所得等を合計した所得金額をいいます。
② 給与所得控除の見直し
給与所得控除の上限額が適用される給与等の収入金額が850万円、その上限額が195万円に引き下げられます。なお、23歳未満の扶養親族がいる人については給与所得控除額の引下げにともない税負担が増加しないように一定の措置がとられます。
③ 給与所得控除と基礎控除をあわせた見直しの影響
下の図は、平成32年分以後の給与所得控除等の見直しがどれだけ給与所得者の所得金額に影響を与えるかを示したものであります。例えば年収1千万円の人で扶養親族がいなければ、所得金額は今より15万円ほど増加しますので、年間で5万円程の所得税(住民税含む)が増加することとなります。
現在の収入をもとに今後どれだけ所得税が増加するのか試算してみてもよいかもしれません。
【執筆者プロフィール】
松田雄一(まつだゆういち) 税理士
中堅企業の組織再編に関する税務コンサルティング業務や、オーナー企業への相続・事業承継コンサルティング業務などに従事。
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