
少額投資で、みんなで一緒にまちづくり。② 「ハロー!RENOVATION」がめざす地域再生の形 株式会社エンジョイワークス 取締役 松島孝夫氏
鎌倉を拠点に、不動産、建築、まちづくり、空き家再生などの取り組みを行っている株式会社エンジョイワークスが2018年6月に正式ローンチしたまちづくり参加型クラウドファンディングサービス「ハロー!RENOVATION」。
その第一弾プロジェクトである「葉山の"空き蔵"泊まれる蔵プロジェクト」は募集総額を調達し、2018年7月20日に宿泊施設として正式オープンしている。
空き家や遊休不動産の再生を軸に展開するクラウドファンディングプラットフォームサービスで、地域の経済圏を中心とした地域再生を目指す同社の取り組みについて、取締役 松島孝夫氏にお話を伺った。
前編ではエンジョイワークスの考え方や「ハロー!RENOVATION」が誕生したきっかけと概要を、後編では実際に開始されたプロジェクトの事例をもとに同社が目指すものを掲載する。
第一弾プロジェクトは小規模不動産特定共同事業の第一号に
ハロー!RENOVATIONの第一弾プロジェクトは、葉山の空き蔵を宿泊施設にリノベーションする「葉山の"空き蔵"泊まれる蔵プロジェクト」
「もともと葉山に住んでいる人で知らない人はいないというくらい有名な蔵だったのですが、しばらく使われていない状態が続いていて、そろそろどうにかしたいと思ったオーナーさんが蔵の活用について当社にご相談してきてくださったことがきっかけです。当社の単独事業として行うことはできましたが、ハロー!RENOVATIONの立ち上げも決まっていて、みんなで一緒にまちづくりをするプロジェクトとしてもわかりやすいと思い、ある意味、企業としての利益を削って、ハロー!RENOVATION第一弾プロジェクトとして立ち上げました。それが期せずして小規模不動産特定共同事業の第一号案件となりまして、国土交通省の方々が視察に来られましたね」
第一弾プロジェクトは、募集目標6,000,000円、想定利回り年4.0%(税引き前)、一口50,000円(1人当たり上限20口)でスタートした。
「遊休不動産を活用したいオーナーと、そこで何か新しい事業をしたい人、そしてその事業を応援したい人をマッチングするクラウドファンディングサービスがハロー!RENOVATIONです。第一弾プロジェクトは、空き蔵を活用したいオーナーさんがいて、当社がそこを宿泊施設として活用したい事業主となり、それを応援してくれる人を募集するというプロジェクトです。
プロジェクト開始にあたり、SNSで魅力的な宿泊施設にしていくためのアイデアを募集したり、宿づくりのイベントを開催したり、いろいろな形で様々な人に参加してもらう仕掛けを行ってきました。「The Bath & Bed Hayama」という名前は、忙しい毎日ではおざなりになってしまいがちだけど、日常で大切にしたい時間を取り戻すための場所がコンセプトで、その象徴としてバスとベッドなんです。なので、宿づくりイベントもそのコンセプトをみんなで掘り下げるものでした。バスタイムの過ごし方をブレストしたりとか、施設内に飾るアートから日常におけるアートとは何なのかを考えたり、寝る前の時間の過ごし方として、本の選書のために詩の輪読をしてみたり、全部で19回ほどイベントを開催しました。私は参加できませんでしたけど、詩の輪読はとても好評だったみたいです。
結果、ファンドとして目標総額を集めることができたのですが、そういった活動を通じて興味を持ってくれた人たちを中心に、まったく投資経験のない人が半分以上、そして一口か二口で出資してくださる人が全体の60%となりました。いわゆる株式投資などをしている投資家さんだけではなく、まちづくりに参加しようということに価値を見出せる人が、少額で投資という形でも参加してくださったというのも成果だと思います。
「将来的に事業を立ち上げたい」「新しいコミュニティに参加したい」と思っている人たちが、投資という形で長くかかわりながら、宿泊施設の運営や改善などの生の学びを得られる、また面白そうなことをやっている仲間になれる、そんな場としてとらえてくださっているように思います」
クラウドファンディングサービスで広がるまちづくりの形
「第二弾となった桜山シェアアトリエというプロジェクトでも、入居しているクリエイターさんとのコミュニティに参加したいとか、サラリーマンだけど将来的にコワーキングスペースを運営してみたいとか、そういうハロー!RENOVATIONのコンセプトを理解してくれている人が投資してくださっています。5万円で参加できるので、5万円で5年間、シェアアトリエがどうやって運営されているのかとか知ることができる。よりリアルな学びを得られると考えてくれている人が多いですね。
ただ僕たちも、そういう人たちは「ハロー!RENOVATION」という場を盛り上げてくださる最初の人たちだと思っていて、当たり前ですけど、いわゆる投資をしていらっしゃる人たちにもこの場に来てもらいたいと考えています。利回り重視でたくさん投資をしてきて、お金にはなったけど、この辺で新しいことをやってみたいという投資家さんも実際にいらっしゃいます。そこに、投資したことがない人、自分のまちが好きだけどどうやって貢献したらいいかわからないという人たちも徐々に巻き込んでいって増やしていきたいと思っています。かなり長期的な目線ですが、家計金融資産のうち現預金938兆円をみんなでまちづくりのファンドに出してもらう、これを空き家・遊休不動産の再生に活かしていくというのが実現したいことです。820万戸あるといわれる空き家も、すべてが活用できるものではないですが、会社として地道に不動産業を続けてきた不動産営業部隊と、建築設計部メンバーと一緒に物件を見て様々な見地から活用方法を考えていくことができることも当社の強みだと考えています。
また、今のところ僕たちが、プロジェクトのリーダーやファシリテーターとして進めていることが多いですが、今後はいろいろな地域の人とつながって、その地域の方にこのツールを使っていただくことで、ハロー!RENOVATIONはどんどん広がっていくと思っています。その際、その地域の人たちを必ず巻き込みたい。本当に地域の魅力を知っている人がやりたいことを、その経済圏で成り立つようなビジネスを作ってもらって、地域の人たちのお金で運営していく場所を作っていきたいですね。
例えば鎌倉でプロジェクトを立ち上げたからと言って、鎌倉市民だけが参加するかというとそうではなく、投資という形で東京の人もたくさん来ていただけるし、九州の人にも来ていただけるかもしれない。いわゆる関係人口みたいなものを、ハロー!RENOVATIONのプロジェクトを通じて増やしていきたいです。」
株式会社エンジョイワークス 取締役 松島孝夫氏
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ハロー!RENOVATION
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