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米国不動産取引におけるエスクロー制度

(写真=designer491/Shutterstock.com)

目次[非表示]

  1. 1.エスクロー制度とは
  2. 2.カリフォルニア州のエスクロー制度
  3. 3.当事者は売買契約書の吟味が必要

エスクロー制度とは

米国不動産取引におけるエスクロー制度について、我が国では概ね以下のように理解されている。

(1) 米国不動産売買取引における決済・引渡し手続きは中立的立場の代理人が運営管理するエスクローを通じて確実に実行され、売主と買主は保護されている。

(2) 通常の住宅売買取引においてエスクローが実施する決済・引渡し手続きとは、登記履歴の調査手配と内容確認(法的事項の確認義務は負わず専門弁護士の助言を求めると推定される)、物件担保ローン返済と抵当権抹消手続き、購入者ローンの担保設定手続きと売主等への元本分配、購入代金の受領保管および債権者と売主への分配、譲渡証書の受領・登記手配・引渡しなどである。売買代金は、売買契約に定めた譲渡を有効にするための諸書類と手続きが整うまで分配されず、整わない場合は契約に従って買主または売主に返還される。

(3) 手付金と売買代金はエスクローに保管されるため、売主の破産・流用等による返還不能リスクはない。(但しエスクローホルダーの不履行リスクは免れない。)
カリフォルニア州をはじめ米国西海岸では大型取引を除く多くの不動産取引にはエスクロー利用が不可欠となっているが(*)、米国不動産法は州により異なりエスクロー法も州により異なる。更に不動産取引の商習慣は同州内でも地域により異なる。(*大型取引では総合法律事務所の弁護士が売主と買主を各々代理して決済・引渡し手続きを行う事例が多い。)

カリフォルニア州のエスクロー制度

以下では、カリフォルニア州政府不動産局が発行するガイド(*)を参照してカリフォルニア州のエスクロー制度について補足説明したい。(* Bureau of Real Estate: Reference Book – A Real Estate Guide Chapter 8 Escrow)

(1) 不動産取引でのエスクローとは決済・引渡しのための短期の信託制度であり、売主と買主が当事者としてエスクロー契約書を締結する。エスクローホルダーは、当事者に対する双方代理人として、当事者から受領するエスクロー指示書に指示された手続きを売買契約書に従って忠実に遂行する義務を負う。エスクローホルダーは当事者に対して受託者責任を負う。なお住宅ローンも多くの場合金融機関と借入人が当事者として融資実行手続きにエスクローを利用している。

(2) エスクローホルダーはエスクロー指示書に指示されていない手続きを実施してはならず指示内容について裁量権をもたないため明解な指示が必要となる。指示内容について当事者間で紛争が生じた場合はエスクローホルダーは管轄裁判所に裁決を求める権利を持つが、当事者間の紛争には介入せず調停・仲裁を行ってはならない。助言は可能だが法的助言は禁止されている。

(3) エスクローホルダーは法人でなければならず、州免許を要し、記帳規定や会計監査など詳細な業務規定が州法により課せられている。銀行、貯蓄組合、権原保険会社、信託会社、弁護士、および不動産仲介業者がエスクローホルダーとなる場合は州エスクロー法の適用外だが各々の業法に規制されている。エスクローホルダーの選択は当事者の合意に拠る(即ち選択責任は当事者が負う)。専業エスクローホルダーは多くが中小法人であり州法で供託を課される保証金は$25,000に過ぎないが、所属協会によっては高額の保証を提供している。

当事者は売買契約書の吟味が必要

以上の通りエスクローホルダーの手続き履行は売買(または融資)契約書とエスクロー指示書に従う。(例えば手付金をエスクロー預託せず売主に預託する売買契約であれば買主は売主の契約履行リスクと信用リスクを負うことになる。)

このため当事者は売買契約書の吟味が必要だが、米国不動産売買契約は日本契約に較べて規定が詳細であり、専門弁護士の助言を得ずに自己判断で売買契約を締結する場合には、過去の紛争事例を反映した州仲介業者協会等の雛形を使用して取引リスク(即ち紛争解決弁護士費用)を軽減する配慮が必要であろう。(提供元:株式会社ZUU)


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