
事業承継とは? 成功するためにポイントを紹介
事業承継とは、会社の事業を経営者の親族や従業員に引き継ぐことをいう。事業承継には、いくつかパターンがあり、親族に承継するケース、従業員等に引き継ぐケース、更にはM&Aにより承継するケースがある。
今日において、この事業承継は中小企業の経営者にとって大きな悩みのタネとなっているのだ。
なぜかというと、高度成長期と人口増に恵まれた時代と違い、急激な少子高齢化と家父長制度的な文化が崩壊したことにより、後継者がいない、あるいは候補者がいても本人に承継する意思がない場合があるからだ。更に、成熟経済の現代では、事業の伸び悩みに苦しむ中小企業は少なくない。そのため、仮に後継者がいたとしても承継そのものに税金などの支出がかさみすぎて、その後の経営を圧迫する可能性も否定できない。
このような事態に対処するためには、現役の社長が健在のうちに対策を練っておくことが必要だ。具体的には、次のようなことが事業承継のポイントとなる。(写真=PIXTA)
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後継者がいる場合:後継者候補が40代のうちから10年かけて育成すること
後継者が親族であれ、従業員等といった他人であれ、後継者候補がいる場合にはなるべく早めに後継者育成をしたほうがいい。なぜかというと、他の役員や社員、取引先や金融機関が次の社長を受け入れ、応援する体制が整っていなければ、事業の継続や発展は望めないからだ。
経営は社長1人の能力で行うものではない。多くの人の助力があってこそ成り立つものだ。そのため、経営の成否は社長を中心とした人間関係が良好であるかどうかにかかっている。
親族に引き継ぐ場合:相続が「争続(族)」にならないよう、後継者以外の親族に引き継ぐ財産に十分に配慮を
親族が後継者の場合には、後継者以外への財産分与に十分配慮すべきだ。というのも、自社株を親族に分散させてしまうと、次世代・次々世代の経営者に決定権がなくなり、会社経営が行き詰まる恐れがあるからだ。
現役社長が保有している自社株は、事業承継税制を上手に活用して、税金の負担を軽減しながら後継者の親族に移転し、それ以外の財産、つまり社長個人の金融資産や土地建物などを他の親族に対してなるべく均等に分配する。他の親族への財産の分配についても、暦年課税制度や相続時精算課税制度、教育資金等の贈与税の非課税措置などの制度を上手に活用し、引き継ぐ側の税負担を軽減するように工夫するとよいだろう。
従業員等に引き継ぐ場合:後継者の負担が軽減するような配慮を
親族以外、つまり従業員等に引き継ぐ場合には2パターンがある。一つは、会社の役員や従業員など社内の人間に承継するパターン。もう一つは、取引先や金融機関など外部から後継者を雇い入れるパターンだ。この場合も人間関係への配慮が必要だが、他にも親族ではないからこそのポイントがある。それは「個人債務の軽減への配慮」だ。
経営者は会社経営のために、個人的に債務を保証したり担保を設定したりするケースが多い。これは従業員等から経営者になった場合も変わらない。それどころか、経営者の親族ではないため、相続による資産の増加が見込めない分、債務保証や担保設定による経済的・精神的な負担が過重になる可能性が高い。
この場合には、承継前に会社の債務を圧縮しておく、後継者の債務保証を軽減すべく金融機関と粘り強く交渉をする、後継者には報酬を高めに設定するなどして負担が少しでも軽減されるような措置が必要となる。
M&Aの場合:事前に会社の評価額を高くする工夫を
後継者がいない場合、やむを得ずM&A、つまり会社を売却し第三者に経営を引き継ぐケースもある。この場合、仲介する金融機関や譲渡先を探し、売却条件を検討しながら交渉した後、売却契約に至るのが一般的だ。
ここにおいても成功のポイントがある。それは、事前に会社の評価額を上げる工夫をすることだ。これは単に譲渡収入を上げるためだけではない。会社の評価を上げることは、役員や従業員がより働きやすくなるだけでなく、取引先や関係金融機関にもより大きなメリットがもたらされることにつながる。
対策としては、債務整理や不要な資産の売却、経費のスリム化、会社の強みを伸ばす工夫、マニュアルやその他規程の作成などがある。会社の安定感が増し、以後の成長性も見込める状態になれば、よりよいM&Aにつながるだろう。
創業時は社長1人のものだった会社も、事業承継を考える時点では多くの関係者のものとなっている。事業承継の成功は現役社長だけでなく、後継者や関係者全員の幸せにつながる。事業の継続と発展を願うなら、上記のような対策をしておくことが望ましいだろう。(提供元:株式会社ZUU)
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